相続放棄をする場合の家の片付け

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2024年09月13日

1 被相続人の家にある物の法的性質

 人が亡くなった場合には、特異なケースを除くと、通常は居住していた場所に亡くなった人が使用していた物が残ります。

 衣類、家財道具などがその典型です。

 これらのものは、たとえ使い古されていて、価値は無さそうに見えても、亡くなった方の所有物である以上、原則として相続財産になります。

 そのため、相続放棄をする場合、基本的には処分することができません。

 以下、その理由と対処法について説明します。

 なお、家の中にあっても、亡くなった方の物ではないことが明確な物については、当然ですが相続財産にはなりません。

2 相続放棄の法的な効果

 相続放棄(ここでいう相続放棄とは、裁判所に対して相続放棄申述書を提出して行う手続きのことです。)には、初めから被相続人の相続人ではなかったことになるという法的な効果があります。

 この効果があるからこそ、被相続人の相続債務を一切負わずに済むことになります(その反面、相続財産を取得することもできません)。

 もっとも、相続放棄によって相続人ではなくなってしまうため、被相続人の財産に対しては、手を付けることができなくなります。

 他人のものを勝手に持って行ったり、売ったりすることはできないということと同じです。

 さらに、相続放棄に関しては、法定単純承認事由というものが存在します。

 これは、相続放棄の効果が認められなくなってしまう可能性がある行為のことをいいます。

 今回との関連でいえば、相続財産の処分にあたる行為がこれにあたります。

 具体的には、被相続人の財産の売却や廃棄などです。

 このような行為は、被相続人の財産を取得する意思の表れと捉えられるため、相続放棄が認められなくなってしまうのです。

3 実務的な対応

 上述の相続放棄の法的な性質を踏まえると、被相続人の家、特に賃貸物件に残された家財道具等(残置物ということもあります)の取り扱いは、実務上とても悩ましい問題になります。

 原則通りに考えるのであれば、被相続人の持ち物については一切関わることができないことから、何もしない選択をとることになります。

 持ち家であれば、このようにしても当面は問題になりません(別途、不動産の管理という問題が発生しますが)。

 被相続人が賃貸物件に住んでいる場合には、大きな問題になります。

 相続放棄をする旨の説明を理解してくれる管理会社や賃貸人であれば、対応してくれることもあります。

 もっとも、こちらの言い分には耳を貸さずに、早く残置物を片付けて部屋を空け渡すよう、強く迫ってくるケースもあります。

 被相続人の所有物の処分については、形見分け程度のものであれば、法定単純承認事由に該当しない旨、裁判所が認めています。

 もっとも、残置物すべてとなると、話が変わってきます。

 残置物が古い家財道具や着古した衣類であるなど、売却しても値段が付かない、または逆に処分費が必要になる場合は、そもそもいわゆるゴミであり、財産ではないとして、これらを処分しても法定単純承認事由に該当しないという解釈もあり得ます。

 もっとも、現行法上、裁判所が明確に認めているわけではないため、どうしてもリスクがある点には留意する必要があります。

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