相続放棄の取消しはできるか

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2024年10月17日

1 相続放棄の効果と取消し

 相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになるという、非常に強力な効果があります。

 ある相続人が相続放棄をすると、他の相続人の法定相続割合が変動したり、次の順位の相続人が相続人になったりするなど、相続関係に大きな影響を及ぼします。

 別の観点から見ると、相続放棄がされた後で、相続放棄の効果がなくなり、相続人が復帰すると、相続関係に大きな混乱が生じます。

 そのため、相続放棄は、法律上は取り消すことができるとはされているものの、取消が認められるケースはかなり限定されています。

2 相続放棄を取り消すことができる場合

 たとえば以下に挙げるような場合には、相続放棄の取消しが認められることがあります。

 

・法定代理人の同意なく未成年者が相続放棄を行った場合、成年被後見人が相続放棄を行った場合、保佐人の同意等なく被保佐人が相続放棄を行った場合

・後見監督人がいるときに後見人がその同意を得ずに、被後見人ないし未成年被後見人の相続放棄をした場合

・錯誤があった場合。例えば、被相続人にはほとんど財産がないと思い込んでいた場合や、被相続人には多額の負債があると思い込んでいた場合

・詐欺又は強迫により放棄した場合。他の相続人が自己の取り分を増やすために、被相続人には多額の負債があると伝えて相続放棄をさせた場合や、相続放棄をしないと暴力を加えると伝えて相続放棄をさせた場合

 

 もっとも、このような事情が存在していることと、このような事情の存在を裁判所に対して証明することは別の問題です。

 特に、錯誤、詐欺又は強迫については、親族間においては、通常は口頭によって行われることも多いため、第三者である裁判所を納得させるに足るだけの証拠を揃えることは非常に難しいと言わざるを得ません。

 そのため、相続放棄をしようと考えている場合は、まず弁護士に相談するなどして、慎重に検討することが必要になります。

 相続財産の調査に時間がかかりそうな場合は、あらかじめ相続放棄の申述期間の延長の申立てをしておけば安心です。

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