相続放棄をしたら裁判所から呼び出しを受けるか

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2023年08月08日

1 相続放棄手続きの仕方

 相続放棄は、家庭裁判所を通じて行う手続きです。

 家庭裁判所によって相続放棄の申述が受理されると、申述人(相続放棄の申述をした相続人)は、はじめから被相続人の相続人でなかったことになるという法的な効果が発生します。

 相続放棄をするためには、相続放棄申述書という書類と、戸籍謄本類などの付属書類を、管轄の家庭裁判所に提出します。

 相続放棄申述書には、被相続人の氏名や本籍地等、申述人の氏名や本籍地等のほか、相続放棄をする理由等を記載します。

2 家庭裁判所による審査

 相続放棄をするため、管轄の家庭裁判所に所定の書類を提出すると、家庭裁判所は審査を開始します。

 審査は、主に2つの観点から行われると考えられます。

 1つめは、形式的な観点による審査です。

 具体的には、提出された書類に必要な事項が記載されているか否か、及び必要な書類が足りているか、を審査します。

 必要な事項が記載されていなかったり、誤記載があるような場合には、家庭裁判所から申述人(代理人弁護士がついている場合には、代理人弁護士)に対し、確認がなされたり、場合によっては訂正した書類を再提出するように求められることがあります。

 特に戸籍謄本類については、子が亡くなった場合の直系尊属(親や祖父母等)による相続放棄の場合、被相続人である子の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して提出する必要があります。

 これは、被相続人である子に、第1順位の相続人(子の子や、その代襲相続人)がいないことを、家庭裁判所に対して示すためです。

 兄弟姉妹が亡くなった際の相続放棄の場合には、被相続人である兄弟姉妹の出生から死亡までの連続した戸籍謄本に加えて、直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本も必要になります。

 これは、被相続人である兄弟姉妹に、第1順位の相続人、第2順位の相続人(直系尊属)がいないことを、家庭裁判所に対して示すためです。

 直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本については、理論上はいくらでもたどることができてしまうため、家庭裁判所の運用により、〇〇年以降に出生した直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本まででよい、とされることもあります。

 代襲相続人がいる場合には、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本も必要です。

 2つめは、法的な観点による審査です。

 相続放棄が認められるためには、法律上の要件を満たしていなければなりません。

 具体的には、申述人が被相続人の相続の開始を知った日から3か月以内の申述であるか、その他に相続放棄が認められなくなる可能性のある行為(法定単純承認事由に該当する行為)がないか等を、家庭裁判所は審査します。

 被相続人の相続の開始から3か月以内の申述であり、被相続人はめぼしい財産を所有しておらず、借金等の債務だけがあるというような場合には、法律上の要件を満たしている可能性が高いと考えられるため、家庭裁判所による審査もそこまで厳密なものにはならないと考えられます。

 一方で、相続放棄の申述が、相続の開始を知った日から3か月以内とされているものの、被相続人の死亡の日から3か月以上が経過している場合や、法定単純承認事由に該当する行為が存在する可能性があると考えられる場合には、家庭裁判所も厳格な審査を行うものと考えられます。

3 家庭裁判所による事情確認

 申述された相続放棄を認めるべきか否かについて、家庭裁判所が厳格な審査をするべきと判断した場合、申述人に対して、相続放棄の申述に至るまでの事情等の確認を行うことがあります。

事情確認の方法のひとつとして、家庭裁判所による審問、すなわち申述人を家庭裁判所に呼び出し、裁判官等が詳しく事情を聴き取るというものがあります。

 実際には、家庭裁判所による事情確認方法は、審問以外にも、書面による質問状送付があります。

 家庭裁判所は、相続放棄の申述がなされると、申述人に対して質問状を送付することがあります。

 質問状を送付する趣旨は、法定単純承認事由に該当する行為の有無の確認、および申述人の真意に基づく相続放棄の申述であるか否かの確認です。

 事情の確認が必要と考えられる事案であっても、あまり複雑または重大な事情とは考えられない場合、質問状への回答のみで終了することも多くあります。

 質問状への回答だけでは家庭裁判所が事情の確認をしきれない場合や、質問状への回答に不足や不備がある場合、家庭裁判所は申述人を呼び出して、直接事情の聴き取りを行うという流れになることが考えられます。

 家庭裁判所から呼び出された場合、原則として指定された日(「期日」といわれます)に家庭裁判所に行き、指定された部屋に入ります。

 代理人弁護士が就いている場合には、同伴することもできます。

 家庭裁判所に指定された部屋に入ると、裁判官や書記官から事情を聴かれますので、正直かつ正確に答えます。

 そして、裁判官が、問題ないと判断した場合、相続放棄が認められる(「受理」といわれます)という流れになります。

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