未成年の方の相続放棄

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年08月22日

1 相続放棄の方法

 家庭裁判所で行う相続放棄の申述は家事事件手続になりますが、家事事件手続法17条は、「当事者能力、家事事件の手続における手続上の行為(以下「手続行為」という。)をすることができる能力(以下この項において「手続行為能力」という。)、手続行為能力を欠く者の法定代理及び手続行為をするのに必要な授権については、民事訴訟法第28条、第29条、第31条、第33条並びに第34条第1項及び第2項の規定を準用する。」と規定しています。

 そして、この規定で準用されている民事訴訟法31条は、「未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。」と規定していますので、未成年者が相続放棄の申述を行う場合、法定代理人が未成年者を代理して行わなければなりません。

 なお、民法818条3項本文は、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」と規定していますので、両親が親権を行使する未成年者の相続放棄は両親が共同して(連名で)行わなければなりません。

2 熟慮期間の起算日

 民法915条1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定していますが、同917条は、「相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」と定めています。

 つまり、未成年者の相続放棄の熟慮期間は、その法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から3か月、ということになります。

3 利益相反の場合

 民法826条1項は、「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」と規定しています。

 例えば、父母と未成年の子の三人家族で、父が死亡して相続が発生した場合、相続人は母と子になりますが、母は、自らも相続放棄を行わない限り、子の法定代理人として相続放棄を行うことはできません。

 なぜなら、子について相続放棄を行うと、第1順位の相続人が不存在となり母の相続分が増えるためです。

 つまり、子について相続放棄を行うと母の相続分が増えるので、母と子の利益が相反するということになります。

 この場合は、母は、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求し、特別代理人が相続放棄の手続きを行うことになります。

 母も相続放棄を行うのであれば、子について相続放棄を行っても母の相続分は増えませんので、母は子の法定代理人として相続放棄を行うことができます。

 民法826条2項は、「親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」と規定しています。

 例えば、母と未成年の子二人の三人家族で(父は既に死亡しているとします)、父の父、すなわち子らから見ると祖父が死亡した場合、子二人は祖父の相続について代襲相続人となります。

 この場合において、子二人のうち一人について相続放棄を行うと、もう一方の子の相続分が増えることになり、二人の子の利益が相反することになりますので、母は法定代理人として相続放棄を行うことはできず、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません。

 子二人とも相続放棄を行う場合は、利益相反にはなりませんので、母は二人の子の法定代理人として相続放棄を行うことができます。

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