相続放棄をすると故人の賠償金を支払う必要はなくなるか

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年09月24日

1 相続と相続放棄の効果

 民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定しています。

 故人(被相続人)が賠償金を支払わなければならないということは、具体的には損害賠償債務を負っているということになりますが、これは被相続人の財産に属した義務になりますので、相続により相続人が承継する対象となります。

 しかし、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うと、相続放棄を行った者は、「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみな」され(民法939条)、損害賠償債務を承継することはありませんので、支払う必要はないことになります。

2 故人の賠償金の内容

⑴ はじめに

 被相続人が多額の借金をしていたり、他人の借金について連帯保証をしていたりする場合は、相続放棄の必要性についてすぐに気付くと思います。

 また、被相続人が刑事事件を起こしたあとに死亡した場合も、被害者に対する損害賠償義務が発生していますので、その相続を回避するためには、相続放棄の手続が必要であることはすぐにわかると思います。

 しかし、以下のようなケースでは損害賠償義務の発生に気付いていないこともあり得ますので注意が必要です。

⑵ 被相続人が自殺していた場合

 ① 賃借物件内で自殺した場合

 被相続人が賃借物件内で自殺した場合、賃貸人はその居室について一般的な賃料での賃貸が困難になりますので、それにより生じた損害を自殺した被相続人に請求できることになります。

 それゆえ、相続人はその損害賠償債務を相続することになりますので、これを回避するためには相続放棄を行う必要があります。

 なお、相続放棄をしても、その者が、賃貸借契約に基づき被相続人が負う債務の連帯保証人になっていた場合は、連帯保証人として損賠賠償債務を履行しなければなりませんので注意が必要です。

② 走行する列車に飛び込んで自殺した場合

 走行する列車に飛び込んで自殺した場合、鉄道会社は振替輸送費や修理費などの費用を負担することになりますが、これは被相続人の自殺行為に起因して発生した費用になりますので、鉄道会社は被相続人に対してその賠償を請求することができます。

 そのため、その損害賠償債務は相続の対象となり、相続放棄をしないと支払わなければならないことになります。

 以上、自殺のケースを2つ見てきましたが、自殺というのは被相続人が意図して行った行為になり、損害賠償債務発生の要件である「故意、過失」を容易に充たしますので、注意が必要ということになります。

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