相続放棄をする場合香典はどうしたらよいか
1 相続発生により相続人が相続するものは?
民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定しています。
つまり、相続が発生したことにより相続人が相続する相続財産とは、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」ということになります。
2 法定単純承認とは?
民 法921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、1号で「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」と規定しています。
つまり、例えば、被相続人の死後に被相続人名義の預金口座から預金を引き出し、相続人の生活費等に充ててしまった場合は、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したということになり、単純承認をしたものとみなされます。
単純承認をすると、相続人は「無限に被相続人の権利義務を承継する」(民法920条)ことになります。
また、単純承認を撤回することはできず(民法919条1項)、単純承認をした後に相続放棄をすることは原則としてできません。
3 相続財産と相続人の固有財産
このように、相続財産を処分してしまうと法定単純承認となり相続放棄が原則としてできなくなりますので、相続財産と相続人の固有財産の区別が重要となります。
例えば、被相続人が生前病院に入院しており、入院保険金を請求しないまま死亡した場合、入院保険金を請求する権利は被相続人に帰属しますので、相続財産になります。
他方、死亡保険金の場合は、保険金を請求する権利は受取人に帰属しており、被相続人に帰属する権利ではないですので、受取人が相続人の場合は、相続人の固有財産になります。
この場合において、相続人が入院保険金の請求を行い受領してしまうと、相続財産を処分したということになり、単純承認となります。
他方、死亡保険金は、相続人の固有財産となり、受取人である相続人が請求して受領しても単純承認にはなりませんので、保険金受領後に相続放棄を行うことは可能です。
4 香典は相続財産か?
香典は、通夜または葬式の際に、参列者が持参して喪主に渡すものですが、これは、一般的には、喪主に対する贈与と考えられています。
通夜または葬式の際には、被相続人は既に死亡していますので、香典が「被相続人の財産に属した一切の権利義務」に該当することはあり得ません。
それゆえ、相続放棄を行う予定があっても、香典は相続人の方が自由に使っていただいて問題ございません。
お役立ち情報
(目次)
- 相続放棄のやり方
- 相続放棄をしたら裁判所から呼び出しを受けるか
- 相続放棄申述書の書き方
- 相続放棄の理由の書き方
- 相続放棄の必要書類について
- 相続放棄の手続で必要な書類
- 相続放棄における財産調査でお悩みの方へ
- 被相続人の債務の調査方法
- 相続放棄はいつまでできるか
- 相続放棄の取消しはできるか
- 相続放棄をした場合の固定資産税の支払い
- 相続放棄をした際の死亡保険金の扱い
- 相続放棄をする場合の家の片付け
- 相続放棄をしたら、他の相続人への通知は必要か
- 相続放棄の効果とはどのようなものか
- 相続放棄ができないケース
- 相続放棄が受理されないケース
- 相続放棄の却下率とそのパターン
- 被相続人に関する金銭の請求について
- 相続放棄をした場合の生命保険の扱い
- 相続放棄したかどうかを確認する方法
- 生前に相続放棄ができないかお悩みの方へ
- 相続放棄と光熱費
- 相続放棄をした際に代襲相続は発生するか
- 相続財産の処分と相続放棄
- 相続放棄と管理義務
- 相続放棄をする理由について
- 3か月が過ぎてからの相続放棄について
- 相続放棄の注意点
- 遺産分割協議と相続放棄との関係
- 被相続人と賃貸で同居していた場合の相続放棄
- 生活保護を受給している方の相続放棄
- 未成年の方の相続放棄
- 相続放棄をすると故人の賠償金を支払う必要はなくなるか
- 相続人全員が相続放棄をしたら不動産はどうなるか
- 相続放棄をする場合香典はどうしたらよいか
- 相続放棄と限定承認の違い
- 船橋で相続放棄をお考えの方へ
- その他の地域情報
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