相続放棄をする場合香典はどうしたらよいか

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年10月25日

1 相続発生により相続人が相続するものは?

 民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定しています。

 つまり、相続が発生したことにより相続人が相続する相続財産とは、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」ということになります。

2 法定単純承認とは?

民 法921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、1号で「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」と規定しています。

 つまり、例えば、被相続人の死後に被相続人名義の預金口座から預金を引き出し、相続人の生活費等に充ててしまった場合は、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したということになり、単純承認をしたものとみなされます。

 単純承認をすると、相続人は「無限に被相続人の権利義務を承継する」(民法920条)ことになります。

 また、単純承認を撤回することはできず(民法919条1項)、単純承認をした後に相続放棄をすることは原則としてできません。

3 相続財産と相続人の固有財産

 このように、相続財産を処分してしまうと法定単純承認となり相続放棄が原則としてできなくなりますので、相続財産と相続人の固有財産の区別が重要となります。

 例えば、被相続人が生前病院に入院しており、入院保険金を請求しないまま死亡した場合、入院保険金を請求する権利は被相続人に帰属しますので、相続財産になります。

 他方、死亡保険金の場合は、保険金を請求する権利は受取人に帰属しており、被相続人に帰属する権利ではないですので、受取人が相続人の場合は、相続人の固有財産になります。

 この場合において、相続人が入院保険金の請求を行い受領してしまうと、相続財産を処分したということになり、単純承認となります。

 他方、死亡保険金は、相続人の固有財産となり、受取人である相続人が請求して受領しても単純承認にはなりませんので、保険金受領後に相続放棄を行うことは可能です。

4 香典は相続財産か?

 香典は、通夜または葬式の際に、参列者が持参して喪主に渡すものですが、これは、一般的には、喪主に対する贈与と考えられています。

 通夜または葬式の際には、被相続人は既に死亡していますので、香典が「被相続人の財産に属した一切の権利義務」に該当することはあり得ません。

 それゆえ、相続放棄を行う予定があっても、香典は相続人の方が自由に使っていただいて問題ございません。

お役立ち情報
(目次)

お役立ち情報トップ

受付時間

平日 9時~21時、土日祝 9時~18時
夜間・土日祝の相談も対応します
(要予約)

所在地

〒260-0045
千葉県千葉市中央区
弁天1-15-3
リードシー千葉駅前ビル8F
(千葉弁護士会所属)

0120-41-2403

お問合せ・アクセス・地図

お役立ちリンク

PageTop