相続放棄と限定承認の違い
1 相続人になるかどうか
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、その相続について単純承認、限定承認または相続放棄をしなければなりません(民法915条1項本文)。
選択肢は単純承認、限定承認および相続放棄ということになりますが、大きく分けると、承認か放棄か、ということになります。
相続の承認を行った場合は、相続人は、対象となる相続について相続人となることが確定します。
つまり、相続が開始した時から相続人であったことになります。
他方、相続の放棄を行った場合は、対象となる相続について、相続開始の時から相続人にならなかったものとみなされることになります。
つまり、限定承認を行った場合は相続人のままですが、相続放棄を行った場合は相続人ではないということになります。
2 被相続人の負債はどうなるか
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。被相続人の借金等の負債は、義務に該当しますので、相続人が承継することになります。
限定承認の場合、限定承認を行った相続人は相続人のままですので、被相続人の負債も承継することになります。
他方、相続放棄の場合は、相続放棄を行った相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされますので、被相続人の負債を承継することはありません。
なお、限定承認を行った相続人は、被相続人の負債すべてを相続することになりますが、その負債に対する弁済については、相続によって得た財産の限度で行えば足りることになります。
3 被相続人の財産はどうなるか
例えば被相続人が不動産を所有していた場合、所有権は権利に該当しますので、限定承認を行った相続人はその不動産を相続しますが、相続放棄をした相続人は相続人ではなかったとみなされますので、その不動産を相続することはありません。
これは、負債(義務)の場合と同様です。
不動産の場合、容易に売却できるものであれば問題はありませんが、田舎の山林などの場合、売却が困難なことも多く(相続土地国庫帰属制度を利用するにしても要件があります)、処分ができないと、その不動産に対する所有者としての管理義務も負い続けることになります。
相続放棄の場合、相続放棄を行った時に遺産である不動産を現に占有していた場合のみ、相続人または相続財産清算人に不動産を引き渡すまで当該不動産の保存義務を負うことになりますが(民法940条)、田舎の山林を占有していることはあまり想定できないですので、保存義務が問題になることはほとんどないでしょう。
4 単独でできるかどうか
相続放棄は、各相続人の判断で単独で行うことが可能です。
しかし、限定承認は、相続人全員で行わなければなりません。例えば、被相続人の子であるA、BおよびCが相続人で、BおよびCは限定承認を希望していたものの、Aが単純承認をした場合、BおよびCは単純承認するか相続放棄をするかの二択になります。
なお、Aが相続放棄をした場合は、相続人はBおよびCになりますので、BおよびCのみで限定承認することができます。
お役立ち情報
(目次)
- 相続放棄のやり方
- 相続放棄をしたら裁判所から呼び出しを受けるか
- 相続放棄申述書の書き方
- 相続放棄の理由の書き方
- 相続放棄の必要書類について
- 相続放棄の手続で必要な書類
- 相続放棄における財産調査でお悩みの方へ
- 被相続人の債務の調査方法
- 相続放棄はいつまでできるか
- 相続放棄の取消しはできるか
- 相続放棄をした場合の固定資産税の支払い
- 相続放棄をした際の死亡保険金の扱い
- 相続放棄をする場合の家の片付け
- 相続放棄をしたら、他の相続人への通知は必要か
- 相続放棄の効果とはどのようなものか
- 相続放棄ができないケース
- 相続放棄が受理されないケース
- 相続放棄の却下率とそのパターン
- 被相続人に関する金銭の請求について
- 相続放棄をした場合の生命保険の扱い
- 相続放棄したかどうかを確認する方法
- 生前に相続放棄ができないかお悩みの方へ
- 相続放棄と光熱費
- 相続放棄をした際に代襲相続は発生するか
- 相続財産の処分と相続放棄
- 相続放棄と管理義務
- 相続放棄をする理由について
- 3か月が過ぎてからの相続放棄について
- 相続放棄の注意点
- 遺産分割協議と相続放棄との関係
- 被相続人と賃貸で同居していた場合の相続放棄
- 生活保護を受給している方の相続放棄
- 未成年の方の相続放棄
- 相続放棄をすると故人の賠償金を支払う必要はなくなるか
- 相続人全員が相続放棄をしたら不動産はどうなるか
- 相続放棄をする場合香典はどうしたらよいか
- 相続放棄と限定承認の違い
- 船橋で相続放棄をお考えの方へ
- その他の地域情報
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