相続放棄と限定承認の違い

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2024年11月11日

1 相続人になるかどうか

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、その相続について単純承認、限定承認または相続放棄をしなければなりません(民法915条1項本文)。

 選択肢は単純承認、限定承認および相続放棄ということになりますが、大きく分けると、承認か放棄か、ということになります。

 相続の承認を行った場合は、相続人は、対象となる相続について相続人となることが確定します。

 つまり、相続が開始した時から相続人であったことになります。

 他方、相続の放棄を行った場合は、対象となる相続について、相続開始の時から相続人にならなかったものとみなされることになります。

 つまり、限定承認を行った場合は相続人のままですが、相続放棄を行った場合は相続人ではないということになります。

2 被相続人の負債はどうなるか

 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。被相続人の借金等の負債は、義務に該当しますので、相続人が承継することになります。

 限定承認の場合、限定承認を行った相続人は相続人のままですので、被相続人の負債も承継することになります。

 他方、相続放棄の場合は、相続放棄を行った相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされますので、被相続人の負債を承継することはありません。

 なお、限定承認を行った相続人は、被相続人の負債すべてを相続することになりますが、その負債に対する弁済については、相続によって得た財産の限度で行えば足りることになります。

3 被相続人の財産はどうなるか

 例えば被相続人が不動産を所有していた場合、所有権は権利に該当しますので、限定承認を行った相続人はその不動産を相続しますが、相続放棄をした相続人は相続人ではなかったとみなされますので、その不動産を相続することはありません。

 これは、負債(義務)の場合と同様です。

 不動産の場合、容易に売却できるものであれば問題はありませんが、田舎の山林などの場合、売却が困難なことも多く(相続土地国庫帰属制度を利用するにしても要件があります)、処分ができないと、その不動産に対する所有者としての管理義務も負い続けることになります。

 相続放棄の場合、相続放棄を行った時に遺産である不動産を現に占有していた場合のみ、相続人または相続財産清算人に不動産を引き渡すまで当該不動産の保存義務を負うことになりますが(民法940条)、田舎の山林を占有していることはあまり想定できないですので、保存義務が問題になることはほとんどないでしょう。

4 単独でできるかどうか

 相続放棄は、各相続人の判断で単独で行うことが可能です。

 しかし、限定承認は、相続人全員で行わなければなりません。例えば、被相続人の子であるA、BおよびCが相続人で、BおよびCは限定承認を希望していたものの、Aが単純承認をした場合、BおよびCは単純承認するか相続放棄をするかの二択になります。

 なお、Aが相続放棄をした場合は、相続人はBおよびCになりますので、BおよびCのみで限定承認することができます。

お役立ち情報
(目次)

お役立ち情報トップ

受付時間

平日 9時~21時、土日祝 9時~18時
夜間・土日祝の相談も対応します
(要予約)

所在地

〒260-0045
千葉県千葉市中央区
弁天1-15-3
リードシー千葉駅前ビル8F
(千葉弁護士会所属)

0120-41-2403

お問合せ・アクセス・地図

お役立ちリンク

PageTop