相続放棄をする理由について

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2024年10月22日

1 相続放棄の理由は限定されていない

 相続放棄をする理由や動機には制限はなく、広く認められています。

 条文上も、相続放棄の申述手続きを形式的に満たしていれば認められることになっています。

 (もちろん、自己の意思に反して相続放棄の申述をさせられている場合は別です)

 相続放棄をする理由のうち、最も典型的なものとして、被相続人に資産がなく、負債のみがあった場合(債務超過)が挙げられます。

 他には、生前に充分な贈与を受けており相続財産を取得すると他の相続人との均衡を保てない場合や、先祖代々の土地を守るため特定の相続人に遺産を集中させたい場合、あるいは、諸事情により他の相続人や親族と関わりたくない場合であっても、相続放棄の手続きを行うことはできます。

2 プラスの財産より負債の方が多い

 相続放棄の理由として、最もよく見かけるのが、債務超過です。

 簡単に言うと、プラスの財産よりも負債の方が多く、相続をすると財産的に損をしてしまう場合です。

 よくあるパターンとして、被相続人の方が生活保護等を受けられていて、財産と呼べるものはほとんどなく、負債のみが存在するというケースが挙げられます。

 相続の対象となる負債の種類はさまざまです。

 最も多いのが、被相続人が、クレジットカード会社や消費者金融に借入をしていたケースです。

 他に意外と多いものが、税金や社会保険料を滞納していたケースや、知人の借金の連帯保証人になっていたケースなどもあります。

 ちなみに、税金に関する債務は、相続してしまうと自己破産をしても免れられないこともあります。

しかし、相続放棄をすれば免れることができます。

 被相続人の負債については、詳細を調査しなくても相続放棄することができます。

 実際には、疎遠であった被相続人の財政状況を正確に調査するのは困難であり、どこにどれだけの負債を有しているかが分からないというケースの方が多くあります。

 そのため、「多額の負債を有しているおそれがある」という理由で、相続放棄の申述をすることもよくあります。

3 生前贈与を受けている

 被相続人の生前に贈与を受けている場合、他の相続人との均衡を保つため、贈与を受けている人が相続放棄をするというケースがあります。

 生前贈与を受けていた方が相続放棄をすることで、他の相続人の感情面に配慮することができます。

 ちなみに、被相続人がプラスの財産と多額の負債の両方を有している場合、生前に財産のみ贈与し、死亡後に相続放棄をして負債を免れるということも理論上は可能です。

 ただしこの場合には、詐害行為取消権行使の対象になり得ることもあるため、注意が必要です。

4 財産を集中させる

 主に地方都市などにおいて見られるケースですが、相続人の大半が大都市圏へ出てしまい、家業を継ぐ相続人が1人しかいないというような場合において、自宅の土地・建物や負債を含むすべての財産を、その相続人に集中させるという考えのもとで、その他の相続人全てが相続放棄をするというケースもあります。

 あえて裁判所を通して相続放棄の手続きをする目的は、債務の集約にあります。

 プラスの財産については、遺産分割協議において他の相続人が取得しない旨を記載することで、相続放棄と同じような効果を発生させることができます。

 しかし、相続財産の中に債務がある場合、特定の相続人に債務を集約するには、債権者と交渉して免責的債務引受契約を締結しなければならないという煩雑さがあります。

 相続放棄の場合、手続きをした相続人は初めから相続人ではなかったことになるため、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐことはありません。

そのため、相続放棄の方が確実かつ簡単に、債務の集約を実現することができます。

5 相続関係からの離脱

 諸事情により家族と疎遠になっており相続に関わる気が無い場合や、性格的に問題があり話合いが成り立たない相続人がいるためトラブルを回避したい場合、あるいは、被相続人が再婚をして別の家庭を持っているため相続に関与しないでおきたい場合、相続放棄することで、相続に関わらなくてもよくなるというメリットがあります。

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