3か月が過ぎてからの相続放棄について

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年09月04日

1 相続放棄の熟慮期間について

 法律上の原則として、相続放棄は、「相続の開始を知った日」から3か月以内に行わなければならないということになっています。

 被相続人死亡日ではなく、あくまでも相続の開始を知った日から3か月以内です。

 被相続人の死亡日から3か月以上経過してしまったからといって、ただちに相続放棄を諦める必要はありません。

 もっとも、被相続人の死亡日から3か月以上経過している場合、相続放棄手続において考慮しなければならない点があります。

 3か月が過ぎてからの相続放棄で注意すべき点について、以下に説明します。

2 裁判所に対する詳細な説明が必要

 被相続人死亡日と、相続の開始を知った日が異なる場合であっても、相続放棄の申述を行った日が被相続人死亡日後3か月以内なら、実務上は問題になることはあまりありません。

 問題は、被相続人死亡日から3か月以上経過した後に相続放棄の申述を行う場合です。

 一般的には、相続人が相続の開始を知るのは、被相続人が死亡した日か、その日から数日以内であることが多いと考えられています。

 被相続人の死亡日よりもだいぶ後になってから、被相続人が死亡したことを知るというのは、例外的な場合と考えられます。

 そのため、裁判所に対し、被相続人死亡から3ヶ月以内に相続放棄の申述ができなかった経緯・理由を説明しなければなりません。

 説明すべきことは2つあります。

 ひとつは、被相続人の死亡日よりも後になって被相続人の死亡を知った経緯です。

 もうひとつは、被相続人の死亡以降、被相続人の死亡を知らされるまで、知ることができなかった事情です。

 典型的なケースで考えてみます。

 相続人が幼い頃に両親が離婚しており、そのうち片方の親と長年疎遠で没交渉であった場合において、その親が借金を抱えたまま亡くなったケースです。

 死亡した親の債権者が相続人を調査し、被相続人が死亡してから数ヶ月~1年程度経過した後に、書面等により相続人に対して支払いを求めてくることがあります。

 この場合、相続の開始を知った日は、支払いを求められた日(通常、支払いを求める書面に記載された日付か、その数日後)が、相続放棄の熟慮期間の起算点となります。

 相続放棄申述の際は、上記の経緯を書面で説明するとともに、裏付ける資料として債権者からの支払催促書面等の写しを添付する等します。

 債権者から支払いを求められるまで、相続人において被相続人死亡の事実を知りえなかったという事情です。

 同時に、申述人と被相続人が長年疎遠であり、住所も連絡先も不明で没交渉であったがために、債権者からの連絡が来るまで被相続人の生死・財産状況を知り得なかったという背景事情も、裁判所に対して説明します。

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