相続放棄の注意点

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年10月20日

1 相続放棄とは

 相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになります。

 包括的に相続する権利を失うという、非常に強力な効果を持っています。

 また、一度裁判所によって相続放棄が認められてしまうと、取り消すことは事実上非常に困難です。

 そのため、明らかに相続放棄をした方がよいという場合はともかく、判断がつきにくい場合には、うかつに相続放棄手続きを行うべきではなく、慎重に検討すべきであるとも言えます。

2 相続放棄をする時にやってはいけないこと

 相続放棄をする可能性が残っている場合、法定単純承認事由に該当する行為は行わないようにしましょう。

 法定単純承認事由に該当する行為とは、相続放棄が認められなくなる行為のことです。

代表的なものとして、相続財産の処分があります。

 具体的には、被相続人の預貯金を引き出して費消することや(葬儀費用等の例外はあります)、財産を売却換価または廃棄処分をするということが挙げられます。

3 相続放棄をする時にやったほうがよいこと

 相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知った日から3か月です。

 その間、被相続人の財産を調査します。

 被相続人の住居や持ち物を1つ1つ確認し、預金残高、有価証券、不動産、借金の存在を示す資料を探します。

 もし、預金等の財産の存在を示す資料がほとんどなく、逆に貸金業者からの請求書等が多数見つかった場合などは、相続放棄をするという判断をすることになるでしょう。

 目ぼしい財産がない場合や、被相続人の死亡地が遠く離れていて調査が難しい場合は、信用情報を取り寄せて負債の状況を調査するという手もあります。

4 相続放棄をするか否かの判断ができない場合

 相続放棄の期限は、相続の開始を知った日から3か月しかありません。

 この期間だけでは相続人の財産を調査し切れず、相続放棄をするか否かの判断をすることができないことがあります。

 そのような場合、家庭裁判所において、相続放棄の申述の期限の延長をする手続きをします。

 相続財産の調査に時間を要しており、相続すべきか、相続放棄をすべきかの判断がついていないという理由である場合、通常であれば、相続放棄の申述の期限の延長が認められます。

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