相続放棄をした場合の生命保険の扱い

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2024年10月09日

1 相続放棄の対象となる財産

 相続放棄は、初めから被相続人の相続人ではなかったことになる効果を持つ手続きです。

 これにより、被相続人の相続財産を、一切相続することができなくなります。

 相続財産とは、被相続人に属する財産であり、典型的なものとしては不動産などの物権、預貯金や貸付金などの債権があります。

 また相続財産には、借金などの負債も含まれます。

 なお、相続放棄後に相続財産を処分する(自分のものにする)などした場合、相続放棄が認められなくなることがあります(法定単純承認事由)。

 言い換えると、被相続人が亡くなったことに伴って受け取ることができる金銭等がある場合、その金銭(正確にはその金銭を受け取れる権利)が被相続人の債権に基づくものであるか否かで、相続放棄をしても受け取ることができるかどうかが決まります。

 亡くなった方が契約していた生命保険についても、誰が保険金などを受け取る権利を有しているのかがポイントになります。

2 生命保険に基づいて受け取れる金銭の扱い

 結論から申し上げますと、被保険者が被相続人、受取人が相続人となっている死亡保険金については、相続放棄をしても受け取ることができます。

 これは、保険会社から支払われる保険金は、あくまでも被相続人が死亡した場合に、生命保険契約に従って、受取人が直接保険会社に請求できる権利に基づくものであるためです。

 被相続人に借金がある場合、相続放棄によって借金の支払いを免れると同時に、死亡保険金を受け取るということができます。

 もっとも、次のようなものもありますので、生命保険会社に対して請求をする場合は、慎重な対応が必要です。

 注意すべきケースとして、被保険者が被相続人以外の者になっており、受取人が被相続人になっている生命保険があります。

 これについては、相続放棄をした場合、解約返戻金を含め、相続人が受け取ることはできません。

 これは、被保険者とされている者が亡くなった場合、被相続人が保険会社に対して請求できる権利に基づくものだからです。

 誤って請求し、受け取ってしまうと、相続放棄ができなくなる可能性がありますので、注意が必要です。

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